世界の美しさを

新装版 限りなく透明に近いブルー (講談社文庫)

新装版 限りなく透明に近いブルー (講談社文庫)

全編通じて非常に重苦しい.文体の粘り気とでも言うべきものが感じられる.暴力とドラッグとセックスの描写があまりにも強烈であり,吐き気を覚えずに読み進むことはできない.到底容認できない退廃の日々が描かれている.ここに希望を見出すことができるにしても,あまりに弱々しい光である.極小値からの回復を見る前に物語は終わる.果たしてその後どうなったのか.なんとなく察せられるのは,二次導関数が正に転じたかもしれないということだけ.

本書は2009年の新装版で,綿矢りさ氏による解説が巻末にある.この解説を読むと,何故本書が読者に吐き気を催させるのかが分かる.

この恐るべき気持ち悪さ.私はいまだに胸の辺りが不快である.これだけの感じを,文章によってのみ与えることができるというのが文学の力というものだろうか.