劇場アニメ

劇場版アニメの公開が相次いでいる.
そのうち3つを観たので,感想を記したい.

1つめは,『心が叫びたがってるんだ。』.

『あの花』のスタッフが再結集した.
端的に,良い出来だった.(チョコレートとのタイアップCMではないけれども)ほろ苦い青春を存分に見せつけてくれる.劇場版だけあって作画は美しいし,声優陣の演技も素晴らしかった.特に,ヒロインの水瀬いのりさんは,しゃべることができないという設定であるから,出番はどれくらいあるのかと思っていたら,大変な活躍ぶりだった.
しゃべることができないという制約が,しゃべったときの鮮烈さをより印象深くしてくれる.水瀬さんは,『アルドノア・ゼロ』のエデルリッゾ『ダンまち』のヘスティアなどで存在感を増してきているので,今度の活躍を祈る.

2つめは,『ARIA the AVVENIRE』.

この作品については,天野こずえ先生の原作,アニメ1〜3期すべて観ていたし,癒やし系ヒーリングストーリーの最高峰と個人的には思っている.10年ぶりに新作が発表され,驚きとともにネオ・ヴェネツィア再訪が叶い喜んでいるところである.
アニメ3期が終了したあと,主にアテナの歌を担当していた河井英里さん,アテナ役の川上とも子さんが相次いで癌で逝去され,本当の意味での新作は作ることができなくなってしまった.
それでも,今回は茅野愛衣さん,中原麻衣さんの新キャストを迎え,相変わらずの穏やかな世界を描いてくれた.特に,茅野さんは,ARIAシリーズが声優を目指すきっかけとなった方だから,今回の出演は喜ばしいことだと思う.

3つめは,『蒼き鋼のアルペジオ アルス・ノヴァ Cadenza』.

劇場版後編である.前編が総集編+新作という組み合わせで,しかも大事なところで終わって数ヶ月待たなければならないという苦行を強いられた.
が,待った甲斐があった.「極めて素晴らしい」出来だった.これほど楽しませてくれた映画はヱヴァ以来久しぶりではないか.
スタッフが3DCGでの制作に熟達した証として,とにかく迫力のある映像が印象的だった.ネタバレは避けるが,冒頭からしてすごい.
艦隊戦はとくに観るべきものがある.ミョウコウ型重巡洋艦の4人が活躍するのはもちろんだが,その活躍の仕方が予想を上回る暴れっぷりで,よくここまでやったな,と思う.
迫力ある映像だけでなく,ストーリーも王道を行くもので,鑑賞後の満足感は最高といってよい.コンゴウが良い仕事をしている.そして,ラスト.TVシリーズから始まって,こんなに遠くまでやってきたのかと思わせられる.エンドロール後にも続きがある.これで解釈に深みが出る.
原作漫画も読んでいるが,アニメシリーズはオリジナルストーリーで,こうして非常に見事に着地できた.原作の今後にも期待大だ.
TVシリーズのメイキングは,月刊CGWORLDの特別編集『アニメCGの現場2015』に掲載されているし,今回の劇場版も10/10発売の月間CGWORLDで特集される.そちらも楽しみである.

観たいと思っているものとしては『死者の帝国』にはじまる伊藤計劃シリーズ.原作は読んでいない(『ハーモニー』は数年前に購入していまだ積ん読を脱していない)が,こちらも面白そうだ.