ハーモニー

蔵書を1000冊ほど処分した.それでもあと2000弱あるorz…

最近印象深かった作品は,伊藤計劃『ハーモニー』.
2010年に早川Jコレクション版を購入したが,つい先日まで熟成していた.

ハーモニー (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション)

ハーモニー (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション)

そんなことをしている間に,Project Itohが始まって劇場アニメ化されてしまった.それでもなお,読まずに熟成は続いたのであった.

それが何を思ったか,ふと手に取ったら一気に最後まで読んだ.Distopiaものだが,これはすごい.中盤あたりで世界の状況が一転するくだりはあまりの巧みさに思わず唸る.

小説には迫力が必要だ.迫力を生む題材は「対立」であり,最大の迫力を生む対立は「死」である.死線をさまよった作家の書くものには壮絶な迫力がみなぎっている.(筒井康隆『創作の極意と掟』より,要約)

『ハーモニー』から感じる迫力は,作者の伊藤計劃から漂っている気がする.彼は,若くして悪性腫瘍に苦しみ,34歳で肺がんにて没した.文字通り,死が迫り来る状況にいたわけで,小説から浮かび上がる迫力はただならぬものがある.

原作を読んだあとはやはり劇場アニメ版を見たいところだ.


劇場アニメといえば,4月23日は,『劇場版 響け! ユーフォニアム』の公開日である.TVシリーズを初めて見たときは,その完成度に驚かされた.今回は総集編だが,実はかなり期待している.ふつう,総集編というとなんとなく眠気を誘うか,退屈になるか,がっかりするか,ネガティブな印象になりがちである(『劇場版 蒼き鋼のアルペジオDC』のときは,前半の総集編のあたりは新鮮な印象がなく退屈であった.もちろん,後半の新作カットになると俄然前のめりになる.これくらい,総集編と新編にはattractantとしての差がある).

ところが,私個人の印象としては『響け! ユーフォニアム』は,この数年まれに見る傑作(『四月は君の嘘』もそうだが)で,見返すたびに新しい発見がある.初見時よりも引き込まれるくらいである.ひとつひとつの場面に実に多くの情報が詰め込まれていて,演出・作画・音楽のいずれの面から見ても緻密な設計が感じられる.

新作カットと,続編に続く描写があるとなおうれしいのだが.