更新

またしてもずいぶんと放置してしまった.
毎日の更新は無理にせよ,定期更新はしたいものだと思いながらも結局は定期放置になるのである.

多少なり最近の話題に触れておくと,やはりひとつにはノーベル賞の発表があるだろう.
物理学賞で日本人3人が受賞したのは喜ばしいことである.問題は,今後も日本が受賞できるような研究を,今しているかである.ここばかりは時の科学政策と予算配分にも依存してしまう.
化学賞は,思いの外早く超解像顕微鏡が受賞してしまった.それだけ応用面での重要性が認められているということであろう.残念ながら私はこれらの顕微鏡にはあまり縁がなかったわけだが,光学顕微鏡で細胞骨格を回折限界以上で撮影した写真には素直に感激を受ける.もっとも,解像度が上がりすぎると,一昔前の顕微鏡で撮影されていた細胞内共局在分子が実は一致しない,などという不都合が起きてくるのではないかという気もするのである.
医学・生理学賞は,久しぶりに神経科学分野からの受賞だった.特定の場所によって発火するニューロンというのは,なかなか興味深い.Grid cellなどの論文はいままで素通りしていたところがあるが,これを機会にまじめに読もうと思った.場所の脳内表現に関する論文は,発見から30〜40年経っているが,いまだNature本誌やNature neuroscienceなどの一流紙でよく見かける.殊に,最近はinterneuronのつくる神経回路解析が盛んで,オプトジェネティクスを用いた回路調節の論文をいくつか見かけた.まだまだ発展しそうな分野である.


さて,読書の記録をしておく.3ヶ月分なのでselected booksとしたい.
ちなみに,いま,Prokofiev Piano Sonata #7 3rd mov., M. Polliniを聞きながらこれを書いている.何度聞いても良い曲である.

池上彰の講義の時間 高校生からわかる「資本論」

池上彰の講義の時間 高校生からわかる「資本論」

池上氏による.これは本当にわかりやすい.資本論のエッセンスがかみ砕かれて解説されている.これを手引きとして他書に臨むと理解が深まる.

肉骨茶

肉骨茶

新潮新人賞最年少受賞作.著者が大学受験のときに書いたもの.いまは京大医学部に在籍ということであるが,このころから意識していたのか,環境のなせるわざなのか,医学臭のする文.若さか,荒削りの感もある.それでも私は楽しんで読了した.そもそも書店でふと見かけて手に取ったくらいである,私に何らかの訴求力はあったのであろう.タイトルがそそった.

語り口の軽さがよい.あとがきにて,著者は既存の小説は好きではなかった,なぜなら自分の望む内容・方法ではなかったからだといっている.だから自分で書いたのだと.極論すれば著者の自己満足であるが,しかしそれは他者をも満足させることができたという幸運にめぐまれた.続作に期待したい.

先頃までアニメが放送されていた.私は第1巻からずっとフォローしている.これは面白い.最初に直感したように,この作品は大きく成長してくれたので,大変喜んでいる.560万部を突破したということである,とあるシリーズと並んで1000万部突破もそう遠くはないのではないか.

河童・或阿呆の一生 (新潮文庫)

河童・或阿呆の一生 (新潮文庫)

「河童」は有名タイトルだが,読んだことがなかった.読んでみると,無類のおもしろさである.山界の異域に立ち入る話は泉鏡花高野聖』だとか,最近では平野啓一郎『一月物語』だとか,あるけれども,これはまた傑作だと思った.「芋粥」に並んで好きな作品となった.

あとは,軽い読み物にとファミ通文庫を10冊ほど読んだのだが,それはいつか機会があれば記録するだろう.

そういえば,『魔法科高校の劣等生』の著者が新シリーズを開始している.

こちらも細部まで作り込まれた良作である.今後が大いに期待できる.ただ,著者があとがきで述べているが,ロボットものはラノベでは難しいらしい.ぜひとも頑張ってほしい.
『マージナル・ワールド』,『タシュンケ・ウィトコ』のような先例もある.
マージナルワールド (講談社BOX)
異界兵装 タシュンケ・ウィトコ (講談社BOX)


講談社Powersを引き合いに出したので思い出したが,Powers初期のころの,穴が開いたBOXデザインが好きだった.最近は廃止されていて残念である.『コロージョンの夏』を手に取ったときには,そのデザイン性の良さに驚いたものだが.