読書記録<今昔続百鬼 雲>

京極夏彦大先生による,中編集(通常の京極作品に比較するなら短編集と云ってもよいだろう).

文庫版 今昔続百鬼 雲 〈多々良先生行状記〉 (講談社文庫)

文庫版 今昔続百鬼 雲 〈多々良先生行状記〉 (講談社文庫)

本書は,妖怪研究家・多々良勝五郎の行状記という体裁で書かれたミステリィ(?)である.百鬼夜行シリーズとは内容がリンクしている.

京極先生の作風は,他に類を見ない独創性あふれたもので,民俗学・妖怪・科学などを巧みに融合した複雑な作品を作り上げる.

京極先生のデビュー作『姑獲鳥の夏』は,とても新人作家が書いたとは思えないほどによく練り込まれた作品であった.
その後の『魍魎の匣』『狂骨の夢』『鉄鼠の檻』と,シリーズを重ねていくごとに本の厚みが増していく.
京極堂こと古書肆の中禅寺,小説家の関口,奇矯な探偵榎木津,刑事木場らの活躍する複雑な本編シリーズに比べ,妖怪研究家の多々良と,語り手の沼上の二人で進められる本書は,登場人物も少なく,すっきりとまとまっている.

京極先生の作品は,浩瀚であるけれども,一度読み通したならば,その魅力に夢中になるだろう.

ちなみに,『魍魎の匣』はアニメ化されている.アニメ放送当時は,原作小説の存在をまだ知らなかった.珍しい作風のアニメという印象が残っている.