アニメーションに想いを寄せる

日本のアニメーションは，実に素晴らしい文化である．
フランス，アメリカ合衆国をはじめ，諸外国での評価も高い．

私は，アニメーションを愛好している．溺愛していると云っても過言ではない．
日々の技術革新により，アニメーションの品質もまた高まっている．

アニメーションの品質と云うとき，それは単に面白味と云うことではない．
作画の品質，音楽の完成度，声優の演技力など種々の要素を含む．これらの要素が渾然一体となって，作品の品質を決める．

作品の完成度と云う観点では，日常時間帯に放送される作品よりも，深夜時間帯に放送される作品の方が勝っていると思われる．深夜時間帯と云えば，何かいかがわしい要素を含むのではないかと思われるかもしれない．深夜時間帯の作品は，視聴対象者として成人男性を想定する作品が多いために，ともすれば桃色の内容が散見されるかもしれぬ．しかし，そう云った作品は，アニメーションとしては今一歩である．

私は，アニメーションは絵画的音楽的芸術性を持つのが良いと考えている．
透徹した美しい作画と音楽が，アニメーションを高品質にする．

『ソ・ラ・ノ・ヲ・ト』と云うアニメーションがある．
これは，非常に高い完成度を誇る傑作である．背景作画の美しさからは，滅び行く世界の儚さが感じられ，生き生きとした人物作画からは，瑞々しい生命力があふれ出ている．これらが見事に融合して，画面は他に類を見ない絵画性に満ちているのである．
音楽も素晴らしいのである．作曲は，大島ミチル氏が担当し，演奏はフランスのOrchestre des Virtuoses de Parisによる．躍動感にあふれ，豊かな色彩を作品に添える，優れた音楽となっている．

アニメーションは，日本の象徴的な文化としての地位を築きつつあると思う．しかるに，万人がアニメーションに親しみを持っているわけではない．むしろ，アニメーションはまだまだ専門的な領域にとどまっていると云える．日本的文化を象徴するアニメーションは，日常時間帯と云うよりもむしろ深夜時間帯に放送されるものが基盤を担っているだろうと思う．したがって，それを視聴する者は一部の範囲に限定されている．この放送時間の問題が解決されるのであれば，今少しアニメーションが活気を持つのかもしれぬと思っている．