読書記録<もうすぐ絶滅するという紙の書物について>

書店で,この本を手に取ったのは,ひとつには装幀が興味深かったこと(小口装飾として青い染料で染められている.ちなみに,CLAMPの『xxxHOLiC』シリーズも,漫画本にしては珍しく小口染めが施されている),もうひとつには,ウンベルト・エーコの名があったことによる.

もうすぐ絶滅するという紙の書物について

もうすぐ絶滅するという紙の書物について

内容としては,エーコと,脚本家・作家のジャン=クロード・カリエールの対談である.電子書籍の登場によって,長らく続いた紙の書物の時代がどのような影響を受けるかについて,博学の二人が縦横無尽に語る.

日本でも,電子書籍のための端末が発売されたが,最近のニュースでは,売り上げが伸び悩んでいるという.思いの外,電子書籍は普及しないのであろうか? それとも,本を読むという文化が退行しつつあるのか?

もう少し待たねば,状況ははっきりとはしないだろう.

私は,紙の書物が好きである.
電子書籍は,端末一つがあれば,どこでも,好きな本を,好きなだけ読むことができる.しかし,本という物体に触れる感覚を味わうことはできぬ.
紙の手触り,インクの匂い,本の重み,そして,立体物としての書物.

西尾維新猫物語 白』において,電子書籍の登場について羽川翼が語っている.
「本は立体である」.
彼女も,紙の書物が好きなようである.

本を読むというのは,平面に記述された文字を,二次元的に追うことであるが,紙の書物は立体物であるために,頁をめくる,書物を支えるという三次元的な動きも生まれる.その身体の動き,手首・腕にかかる重み,触感,それらの総体が,読書というフィギュールではないのか.

電子書籍を読むのは,読書と云えるのか?