読書記録<青年のための読書クラブ>

直木賞作家・桜庭一樹の作品.

青年のための読書クラブ (新潮文庫)

青年のための読書クラブ (新潮文庫)

お嬢様学校・聖マリアナ学園の創設から消滅までの100年間に起きた事件を,「読書クラブ」という「変わった奴等」の視点で描く.

ガルシア=マルケス百年の孤独』へのオマージュであろう.
さらには今野緒雪マリア様がみてる』を連想する.もっとも,マリみての方では,生徒会の三薔薇様たちを中心とした華やかな学園の正史が描かれるのに対し,本作では,器量や家柄が足りぬために生徒会の中枢に入り込めず,辺境の地で読書に興ずる変人たちの稗史が扱われている.

桜庭一樹先生は,大変な読書家(1日1冊,年間400冊ほど読むという)で,本書を読むだけでもそれがうかがえる.

率直に言うと,桜庭先生の作品はあまり読んだことがない.
若年層向けに書いた『GOSICK』だけである.
そもそも,『GOSICK』と出会ったのは,大学近くの書店で見かけたことによる.当時,『GOSICK』の出版元であった富士見ミステリー文庫がその歴史を閉じようとしているところであった.運良く,絶版になるまえに『GOSICK』シリーズを入手することができ,夏休みに院試の勉強もそっちのけで読みふけったものである.
長らく続刊がなかったけれども,最近になって『GOSICK』のアニメ化,角川文庫での復刊が行われ,数年ぶりに続編が刊行されたのである.

GOSICK ―ゴシック― (角川文庫)

GOSICK ―ゴシック― (角川文庫)

『青年たちのための読書クラブ』に登場する人物は,女子学生である.その言動が,『GOSICK』のヒロイン,ヴィクトリカ・ド・ブロワを彷彿とさせる.知性に裏打ちされた冷静な思考と,俗世(学園社会の中枢)から距離を置く姿勢とが,良く似通っている.