読書記録<未来方程式>

講談社Powers BOXより,神世希(しんせいき)氏の最新刊.

未来方程式-fate equation- (講談社BOX)

未来方程式-fate equation- (講談社BOX)

約520頁に及ぶ新感覚ミステリィ
前作『神戯』の続編である.前作は,1000頁超の大作であった.

神戯-DEBUG PROGRAM-Operation Phantom Proof (講談社BOX)

神戯-DEBUG PROGRAM-Operation Phantom Proof (講談社BOX)

神世希氏の文体は非常に特徴的である.体言止めの多用により,軽快な印象を強める.分量が多いのにもかかわらず,さらりと読めるのは,氏の天分によるのだろう.
もう一つ,氏の特徴として,書体に手を入れることが挙げられる.書体を変えたり,文字の大きさを変えたり,レイアウトを変えたりする.率直に云えば,私はあまり好ましく思っていない.やはり,書体やレイアウトには一貫性があった方が,読みやすく感じるからである.
最近では,書体に手を加える作品も少なくないだろう.平坂読僕は友達が少ない』も一例である.
文字を黒く塗りつぶしたり,印字の濃さを変えたりという視覚的効果を狙った作品もある.サルバドール・プラセンシア『紙の民』などがある.

本書『未来方程式』では,ヒロイン・初音未来(はつねみらい)が持つ未来予知能力により,連続殺人事件が事前に予知される.事件を捜査する警察,初音未来を捜索する探偵,様々な人々の思惑と行動が,最後に収束していく.

浩瀚でありながら,冗長さを感じさせず,実に巧みな作品.しかも面白いのである.

前作『神戯』および本書『未来方程式』には,様々な要素が詰め込まれている.アニメ,ライトノベル,マンガ,書物からの引用や,それらを想起させる文章.ウンベルト・エーコ薔薇の名前』が書物のための書物だとするならば,神世希氏の作品は,サブカルチャーのための書物である.


神世希氏は,デビューして間もない.だから,作品数も少ないが,今後が期待される.

氏の作品で出版されているものは,他にも,『DEUSLAYER』がある.人類を浸食する謎の敵性体と戦う少女たちの厳しい現実を描いた良作である.

DEUSLAYER (講談社BOX)

DEUSLAYER (講談社BOX)