読書記録<少女不十分>

鬼物語に先立つこと一ヶ月,西尾維新氏が講談社ノベルスより新作を発表した.
それが,本書である.

少女不十分 (講談社ノベルス)

少女不十分 (講談社ノベルス)

語り手の「僕」は,30代の小説家である.10年前,大学生時代に「僕」が遭遇した事件について,西尾維新特有の饒舌な文体で語る.「僕」というのは,西尾維新のことではないかと思ってしまう.「僕はこの本を書くのに,10年かかった」「小説で生計を立てるようになって10年」という記述に加え,西尾維新(デビューしてからちょうど10年である)が今まで書いてきた作品を思えば,僕=西尾維新と考えるのは自然である.
もちろん,この話はフィクションなのだろうが,西尾維新を読んできた者にとっては,もしかしたら,これは西尾維新が実際に巻き込まれた事件なのではないかとさえ思える.

ただ,本書の難点は,語りがあまりに冗長で,物語の起伏に乏しいということである.要するに,あまり面白くないということである.

西尾維新を読んできた者にとっては,本書は重要なマイルストーンになるが,そうでない者にとっては,つまらない小説になりかねない.

私がこの小説を読了する前に,書店に平積みされていた本書を,西尾維新を読んだことのない友人に薦めてしまったのは,申し訳なく思う.
西尾維新のファンでなければ,本書は薦められない.


表紙は,碧風羽氏が手がける.

碧風羽氏の画集も発売されている.美麗である.

碧風羽画集 (ビームコミックス)

碧風羽画集 (ビームコミックス)