グリゴリー・ソコロフ

ソコロフ ライヴ・イン・パリ

ソコロフ ライヴ・イン・パリ

ロシアのピアニスト,グリゴリー・ソコロフが2002年にパリで行ったライヴのDVD.ソコロフは,1966年にチャイコフスキーコンクールで優勝した.コンサートを重視するピアニストらしく,録音はあまり多くない.

このDVDには,プロコフィエフピアノソナタ第7番が収録されている.私は,専ら第3楽章を聞いている.

プロコフィエフソナタ第7番は,いろいろなピアニストが弾いているが,ソコロフの演奏は際だって秀逸である.早すぎないテンポで,一音一音を丁寧に弾いている.

一方,ポリーニは,このソナタを正確無比に,しかもかなりの速度で弾きこなしている.ポリーニらしいタッチで,第7番第3楽章にはふさわしいと思う.だが,あまりにも密度が高すぎて,聞き疲れる演奏でもある.

アルゲリッチはというと,彼女の演奏には特徴的だが,あまりに早すぎる.情熱的だけれども,テンポが速過ぎると,演奏難易度が高いコーダに突入すると崩壊してしまう.

グールドはどうか.かなりゆっくりのテンポで弾いている(Youtubeの動画).グールドは,一音一音を等価に弾くピアニストであるから,他のピアニストに比べておもしろい演奏効果がある.

シプリアン・カツァリスという怪ピアニスト(良い意味である)がいる.彼は,相当高速で第7番第3楽章を弾く.早すぎるくらいである.カツァリスは,どんな曲でも彼なりの解釈で弾くので,癖のある演奏になる.ショパンピアノソナタ第3番第4楽章の演奏がおもしろい.正統的な解釈ではないけれども,このような独創的な演奏はそうそう聴けるものではない.

ソコロフの話に戻ると,彼の演奏は,鍵盤上で手が踊っているように見える.跳ね回っている.ピアノの弾き方は各個人によりずいぶんと違うものだけれど,ソコロフの弾き方もまた特徴的だろう.一見したところ,無駄な動きが多いようだが,よくコントロールされている.不思議な弾き方である.まねしようにもまねできぬ.