読書記録＜野ブタ。をプロデュース＞

野ブタ。をプロデュース

第41回文藝賞受賞作．

高校2年生の桐谷修二は，誰とも適度に距離を置き，深く関わりすぎないようにして，誰からも好かれる存在を演じていた．あるとき，クラスに転校生がやってくる．信太という転校生は，太っていて，ブタのようだった．信太は，クラスから孤立し，いじめを受ける．修二は，トイレでいじめられる信太を，何故か助けてしまう．そして，信太がクラスに溶け込み人気者になれるよう，プロデュースを始める．

同時に文藝賞を受賞した『人のセックスを笑うな』がかなり純文学に偏った作品であるのに対し，本作はエンターテインメント性が高い作品である．読書中に何度か笑ってしまったくらいである．

しかし，純文学作品としての格調は失われていないと思う．ずいぶん口当たり良く読めるけれども，最後のあたりには文学的苦みが漂っており，味わい深い終わり方になっている．