読書記録<青色賛歌>

青色讃歌

青色讃歌

第44回文藝賞受賞作.
フリーターの高橋は,同棲相手のめぐみに頼まれ,猫を探す.その過程でいろいろな人々と出会う.おじいさんや,会社員,猫と話せるという子ども.高橋のまわりにもいろいろな人々がいる.ネット事業で生活する設楽,会社を辞めた友人,ライブに出る友人などなど.高橋自身も就職活動をしているが,悉く失敗する.猫探しに自分探しを重ねる高橋だが,とうとう就職が決まった.そのとたん,猫探しの目的が分からなくなるのだった.

この小説にはいろいろな社会層の人間が登場する.高橋はフリーターという,社会的には不安定だが自由な立場.一方,大西という会社員のように,社会的には安定だが不自由な立場.これらの対比がある.けれども,大きな対立は描かれない.人々は流動的にこれらの社会層を移動しているのである.