読書記録<肝心の子供>
- 作者: 磯崎憲一郎
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2007/11/16
- メディア: 単行本
- 購入: 4人 クリック: 49回
- この商品を含むブログ (54件) を見る
第44回文藝賞受賞作.
ブッダ,息子ラーフラ,孫ティッサ・メッティアの三代にわたる物語.仏教を開いたブッダ,異常に記憶力に優れるラーフラ,稲作をもたらしたブッダの妻ヤショダラ,父殺しをするアジャータシャトル,……さまざまなエピソードが並置されていく.短いながらも,圧縮された密度の高い作品である.
ラテンアメリカ文学の匂いが立ちこめている.ガルシア・マルケス『百年の孤独』のように,多数の人物を描くことで,土地と時代の様子が浮き上がってくる.実際,著者はラテンアメリカ文学の巨匠の一人,ボルヘスを愛読しているようである.
ただ,これほど濃い内容を,ごく短くまとめ上げるのには無理があったような気もする.もう少し枚数を増やして,丁寧に描いても良いはず.