読書記録<肝心の子供>

肝心の子供

肝心の子供

第44回文藝賞受賞作.
ブッダ,息子ラーフラ,孫ティッサ・メッティアの三代にわたる物語.仏教を開いたブッダ,異常に記憶力に優れるラーフラ,稲作をもたらしたブッダの妻ヤショダラ,父殺しをするアジャータシャトル,……さまざまなエピソードが並置されていく.短いながらも,圧縮された密度の高い作品である.

ラテンアメリカ文学の匂いが立ちこめている.ガルシア・マルケス百年の孤独』のように,多数の人物を描くことで,土地と時代の様子が浮き上がってくる.実際,著者はラテンアメリカ文学の巨匠の一人,ボルヘスを愛読しているようである.

ただ,これほど濃い内容を,ごく短くまとめ上げるのには無理があったような気もする.もう少し枚数を増やして,丁寧に描いても良いはず.