読書記録<罪と罰>

罪と罰〈上〉 (新潮文庫)

罪と罰〈上〉 (新潮文庫)

罪と罰〈下〉 (新潮文庫)

罪と罰〈下〉 (新潮文庫)

ロシアの大作家ドストエフスキーの代表作.新潮文庫岩波文庫光文社古典新訳文庫の3種の翻訳が入手可能だが,個人的に新潮文庫の装丁が好きなので,新潮文庫版にした.

青年ラスコーリニコフは,彼自身の独創的な理論に従って,悪徳高利貸の老婆を殺害する.だが,偶然現場にやってきた老婆の妹をも殺害してしまう.彼は,予期せぬ殺人を犯してしまったことに悩み苦しむ.
ラスコーリニコフと予審判事・ポルフィーリイとの知的対決,ラスコーリニコフの妹・ドゥーニャと七等文官ピョートル・ペトローヴィチ・ルージンとの婚約をめぐる騒動,ドゥーニャに異常な愛情を示し彼女を追ってくるスヴィドリガイロフ,下級官吏マルメラードフ一家とラスコーリニコフとの悲しい交流,そして,マルメラードフの娘で清純な心の持ち主ソーニャとラスコーリニコフとの交流.こういう様々な人々のエピソードが絡みあって,19世紀半ばのペテルブルグの街が生き生きと描かれる.最後には,ソーニャの清い心に触れて,ラスコーリニコフは自首することを決める.

あまりに濃密な作品で,読み終わった直後には,ひどい疲れを覚えた.本作は,手軽に読書をしようなどと思って手に取るような作品ではないだろう.読者のほうでも,本腰をいれて取り組むに値する作品である.

最終盤,獄中のラスコーリニコフは,刑期が終わったあとの生活について思いをはせるが,何のために生きるのか,という問いを抱く.小説の中では,ラスコーリニコフとソーニャがともに生きていくという希望が与えられている.しかし,現実世界ではそうはいかない.我々は何のために生きるのか.