Good Ending

GE~グッドエンディング~(16)<完> (講談社コミックス)

GE~グッドエンディング~(16)<完> (講談社コミックス)

流石景先生によるこの作品は,開始当初から(単行本で)追いかけていた.2月15日発売の本巻を以て,物語は完結した.ネタバレは避けたいので,内容については深く言及しない.

が,タイトル通りの大団円である.
本作については,あるヒロインの行動が読者の反感を買い,作者に批判が及ぶという悲しいこともあった.けれども,こうして,最後まで至ることができたことは,大変な幸いである.

私は,この作品を非常に気に入っていて,数ヶ月に一度の単行本発売日が楽しみでならなかった.

良い結末だった,と私は言いたいが,物語の終結はどこか寂しく,名残惜しい.

登場人物達は,多くの困難と苦悩を乗り越え,各人が各々の幸福を手にしたように思える.だが,ただ単に幸福なだけというわけではない.物語最終盤,ユキが疲弊している様子には,幸福を感じながらも,日常を生きるということの疲労が現れている.

物語は,必ず終結するものであるが,しかし,物語の当事者にとっては永遠に続くもの(Ever lasting)である.では,物語の当事者(内海や黒川ら)は,どこに存在するのか? バルトの言葉を借りれば,読者という,書かれたもの(この場合は描かれたもののほうが適切か)が収斂する空間である.物語の当事者は,物語を一面的に理解するが,我々読者は,物語の全貌を自らの中に構成し,理解する.内海には分からないことが,読者には(他方の面からの理解によって)分かる.内海は,ユキがどのように仕事をしているか見ることはできない.ユキもまた然り.しかし,読者はそのいずれも見ることができる.そして,物語がどのような流れの中にあって,どのように動いていくかを,多面的に見ていくことができる.こうした過程の中で,読者の内部には,物語の当事者が息づいて,たとえ物語が終結したとしても,彼らの営みが続く.
本作の最終場面では,各々の登場人物たちのその後が描かれる.これは,物語終結後の彼らの人生を読者の中へと移行させる良き導になっている.

3年半にわたって,流石先生お疲れ様でした,と言いたい.そして,このような良作を生み出してくれたことに,心から感謝したい.

アニメ化してくれると良いのだが.