宴のあと

三島由紀夫を全部読んでみようと思い立ったのが,およそ2年前のことである.新潮文庫の三島作品,ようやく半分ほどまでを読んだ.

宴のあと (新潮文庫)

宴のあと (新潮文庫)

老政治家と,その妻となった料亭の女将が都知事選に臨むという筋書き.三島由紀夫のことだから,あまりハッピーエンドにはなるまい.悪くも良くも,という印象だった.昨今のライトノベルにあるような,過度に幸福あるいは過度に不幸な,幻想的すぎる結末というものは,三島作品にはないのであって,そこが三島の作品を美しいものにしていると思う.いや『憂国』のような切腹ラストがあるではないか,と言うかもしれない.けれども,あれは,物語の当事者にとってみれば不幸なことであろうか? あるいは読者にとっては?

私は,あの結末を美しいと思った.もっとも,三島の知り合いのマダムは,気持ちの悪い小説,と言い放ったと,たしかあとがきに書いてあったような気がするが.
切腹ラストが果たして幻想であろうか.いや,私はそうは思わない.あの時代の雰囲気や,三島由紀夫本人がどのようにして死んでいったのかを鑑みれば,恐ろしいほどのリアリティを持っている.

過度な幸不幸は現実世界にはあり得ない.必ず,両者の適度な混合である.ハッピーエンドにしても,マンガやライトノベルのように,幸せなことだけ,というのはリアリティを欠く.

だから,昨日,GEの結びは良かった,と書いた.幸福の中にも,その反対の性質のもの(疲労)が現れていたからである.

……と書いてみるものの,『宴のあと』を読んだのは,少し前のことなので,実は内容を若干忘れていたりする.