阿修羅ガール

阿修羅ガール (新潮文庫)

阿修羅ガール (新潮文庫)

圧倒的文圧,というのが舞城王太郎の特徴であるとどこかで読んだ記憶がある.
本作は,まさにその評価を体現したもの.
今から十年前に三島由紀夫賞を受賞している.舞城王太郎は,メフィスト賞を受賞してデビューした作家である.メフィスト賞といえば,京極夏彦大先生(第0回)や,森博嗣乾くるみ西尾維新など,凄腕の作家を輩出するエンタテインメント系の賞である.もとはエンタテインメント系であるが,最近の舞城王太郎は,芥川賞の候補にもなっているように,純文学系の作品も多いようだ.本作も純文学に傾いている.
最近は,作家の出自(どの賞でデビューしたか)に関わらず,ジャンルを超えて活躍する人が多い.有川浩桜庭一樹などが好例であろう.最近流行の三上延も良い例だと思う.ただ,この傾向は,ジャンル的に軽いと見なしうるライトノベルレーベルから,より文芸の香りが強い方向へと向いていて,その逆はあまりない気がする.
つまり,電撃文庫レーベル出身の有川浩三上延ファミ通文庫富士見ミステリー文庫系出身の桜庭一樹が,一般文芸で活躍する.
この逆の方向へ進んだのは,筒井康隆しか知らない.『ビアンカオーバースタディ』である.
舞城王太郎をたくさん読むわけではない.本作でようやく2冊目である.数年前に『ビッチマグネット』を読んだ記憶がある.『巨神兵東京に現る』の脚本も手がけていた.
この作品の饒舌さには実に圧倒させられる.暴力シーンの生々しさ,退廃的な登場人物達の生.公園での,夫婦のあの行為.実に不愉快だと思うが,このように強く感じさせることができるという点で,すでにこの作品は成功している.
ひとつだけ気になったのが,文字に手を入れていること.すなわち,一部フォントサイズが極端に変更されているという点である.演出上の効果は大きいが,私はあまりこのような形式は好まない.『僕は友達が少ない』や『神戯』などのライトノベル系作品では頻繁に目にするようになった.純文学系でも,サルバドール・プラセンシア『紙の民』でかなり大胆な試みが行われている.面白いと言えば面白い.けれども,読みにくくないか.