アラビアの夜の種族

アラビアの夜の種族〈1〉 (角川文庫)

アラビアの夜の種族〈1〉 (角川文庫)

アラビアの夜の種族 II (角川文庫)

アラビアの夜の種族 II (角川文庫)

アラビアの夜の種族 III (角川文庫)

アラビアの夜の種族 III (角川文庫)

全三巻.何故この本を手に取ったか? 経緯は以下の如くである.
新潮文庫三島由紀夫『宴のあと』を読み終え,巻末の既刊・最新刊紹介に目を通した.ちなみに,私は,本は隅から隅まで目を通す.読後,巻末の本の紹介を見ながら,次に読む本を探したりもする.それで,その紹介本の中にG・D・ロバーツ『シャンタラム』があった.短い紹介文が私の興味をそそる.
さっそく検索してみると,読書家のブログに行き当たり,滅法面白い本として『シャンタラム』や『アラビアの夜の種族』『大聖堂』が紹介されていた.私は,アラビア地域に対して,常に羨望の眼差しを向けている.灼熱の砂漠や,ラクダや,イスラムの香りに包まれた独特な文化,砂っぽい街.中世のイスラム地域に対する興味は尽きない.そういうわけで,すぐさま『アラビアの夜の種族』を注文したのである.そのついでに『大聖堂』も全巻注文した.『シャンタラム』は保留とした.読みたいとは思っている.

ネタバレはしない.ということは,本書について何も書く事ができない.
が,雰囲気としては,千夜一夜物語に似ている.非常に良い.
岩波文庫のマルドリュス版『千夜一夜物語』が絶版になって数年経つ.私が始めて手に取ったのは,大学2年のときだったと思う.あのとき,全巻揃えていれば,と思わずにはおれない.もっとも,岩波文庫は,定期的に復刊するので,私はそのときを待っている.図書館に行けば全巻あるのだろうが,私は書物を所有しないと気が済まない,困った質である.

ひとつだけ,本書について書くなら,これは構造の遊びだということか.どこまでも.

『大聖堂』はまだ読んでいない.こちらもかなりの分量であるから,まとまった時間をとれる夏期もしくは冬期の休暇でなければ手は出せないかもしれない.なにせ,三巻合わせると京極夏彦大先生一冊を超えてしまうのである.なかなか恐ろしいではないか.『マリア様がみてる』を三十巻以上読んでいても,そう思う.

非常に幸いなことに,関わった論文がまもなくアクセプトされる.良いことである.
学会発表をすることになった.
海外出張も決まった.
なかなか順調ではないか.が,柳井正『成功は一日で捨て去れ』を読んだあとには,手放しでは喜べないわけである.研究者は,つぎつぎと成果をださねばならない.ずいぶん昔は,ゆっくりと研究出来る環境があったようだが,今は厳しい成果主義の時代である.業績が無ければポストも無い.当然,研究者としての将来もない.そして,比較的高齢(新卒と比較してである.30代くらいではあるけれども)で研究からドロップアウトすると,就職先はあるのか? 謎である.
こういうときこそ気を引き締めねばならない.