第1週が過ぎ去った.
この国では,金曜の午後あたりからバカンス気分が広がり,人の姿も少なくなる.日本と比べると,人生を楽しもうという雰囲気に満ちているような気がする.
今週末は,いろいろな疲れがたまっているので,外出は控えるつもりである.
辻村深月氏の著作は本作が初めてである.
メフィスト賞受賞作家である.それだけに読者を上手く欺く構成がある.一気に読み進めてしまった.
第1巻から最後までずっとfollowし続けてきた作品であり,アニメ化もあって個人的には思い入れのある作品である.それがとうとう最終回を迎えたわけだ.この最終巻の内容に関しては,いろいろなところで議論が沸き起こっているようである.ここではネタバレはしない.だが,方々で安易にばらまかれている
インセストタブーの件に関しては,表層的な読み方にすぎないと私は反論をしたい.この作品の描きだしたものをしっかりととらえるためには,正確な論理と情報と構造への確かな理解が必要になると思われる.『
ヨスガノソラ』に見る社会通念へのあからさまな違犯行為というところまではいかずとも,物議を醸すのも分からぬでもない.
バタイユ『エロティシズム』にある禁止と違犯を援用して,しっかりと考察を試みなければ,ごく表面的な理解で作品の楽しみと味わいを失ってしまうことになるだろう.本作にせよ,『
ヨスガノソラ』にせよ,あるいは一時的に同様の構造が生じる『
コクリコ坂から』にせよ,短絡的な理解で済ませようというのは,いかにも乱暴で粗雑な議論である.
エクリチュールの再構成される空間であるところの読者にこそ,見識が求められてくる.